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日々の出来事を綴るblog (兼、趣味の備忘録)

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ニホンオオカミは生きている

先日読んだ「まぼろしのニホンオオカミ 福島県の棲息記録」に続き、こんな本を読んでみました。
タイトルだけ見ればゴシップやフィクションを連想させますが、内容はまったく違います。
また、先日読んだ本のように疑問は疑問のままで、まったくニホンオオカミの実像に近づけない・・・というスッキリしない印象はなく、ニホンオオカミや山犬の姿を少しだけ想像することが出来るようになりました。

在野の野生動物研究家である著者は、1997年から山犬の調査を始め、2000年7月8日の夕刻にニホンオオカミらしき動物に出会う。
その動物が何だったのか?ニホンオオカミとは何か?山犬とは何か?を知るために、自ら山中を歩き回り・観察し・資料を採取し・聞き込み調査し・文献を調べ・専門家に意見を伺う等することで様々な角度から検証し、真実に近付こうとする著者の約10年間に渡る研究記録です。
しかし堅苦しい読み物ではなく、一般読者にも読みやすいようにとの配慮から、文体は科学論文の形式をとらずに非常に読みやすいものとなっており、一気にのめり込んで読み終えることが出来るとても面白い作品でした。

著者の野生動物の真実に近付こうとする情熱と行動力、そしてもし絶滅種が生きているならば、今何かしらの手を打ちその種の保存に努めるべきであろうという熱い思いには、感服いたしました。


著:西田 智
作:ニホンオオカミは生きている

著者が目撃したニホンオオカミらしき動物の写真や、以前から見てみたかった、東大や和歌山大にあるニホンオオカミの剥製や、オランダのライデン博物館にある基準標本(ヤマイヌ)等の写真も掲載されています!

※・分類学というのは、思った以上に難しい学問なんだということを知った。
  (形態学・生態学・行動学等が総合的に判断され、分類されるのだそうだ)
 ・「まぼろしのニホンオオカミ 福島県の棲息記録」を読んだ際に抱いた疑問の中に、江戸後期
  や明治初期の人達はこれがニホンオオカミ、これは犬、これはそれらの交配種等と容易に区
  別できていたのだろうか?というものがあったが、やはりそれは困難だった様だ。
  (当時、西洋ではこの分野の分類学は存在したが、日本ではほとんど無かった様子)
 ・江戸後期・明治初期における狼の呼称と人との関係について
  一般の人の多くが、狼の姿を見たことが無かったが遠吠えは聞いたことがあるので、その存
  在は知っていた。
  猟師や山師等、山で生業を立てていた人達は、時折姿を見かけ「山犬」と呼んだ。
  それが、一般の人にも広がり「山犬」と呼ぶ人が増えたようだ。
  農民は、鹿やイノシシ等の害獣を捕食してくれることから「大神」と崇め祀ることもあった模様。
  しかし、1732年に狂犬病が日本に入ることで、人と狼の関係に軋轢が生じだした。
  以後、病死や駆除等により棲息数が急速に減少していったそうだ。
 ・そしてまず驚いたのは、ニホンオオカミという言葉自体が正式に使われるようになってから、
  さほど日が経っていないということ!
  (1960年出版の原色日本哺乳類図鑑/著:今泉吉典が最初とのこと)
 ・だからシーボルトが大阪で入手し送付した、オランダのライデン博物館にあるヤマイヌという
  基準標本=ニホンオオカミとする意見と、そうではなくニホンオオカミとは異なるとする2つの
  意見が現存するのだそうだ。
  (現在、動物学会では前者の意見を採用しているとのこと)
 ・つまり、分類する最初の段階が、非常にあやふやだったようで、それが今も尾を引く形となり
  意見を二分させる原因となっているようだ。
  (現在、基準標本となるのは1個体のみと決まっているそうだが、当時はその様な決まり事は
  無かったようで、ライデン博物館のヤマイヌの資料は4つあるそうだ)
  ☆シーボルト標本について
   1839:テミンク(ライデン博物館館長)により、タイリクオオカミとは異なる新種と判断
        ⇒和名「ヤマイヌ」、学名「Canis hodophilax」とした
    1880:ハックスレーにより、新種ではなくタイリクオオカミの小型亜種と判断
         ⇒学名「Canis lupus hodophilax」とした
    1890:マイバートもハックスレーと同意見と判断
    現在 :クリス・スミーンク(ライデン自然史博物館)は、野化犬と判断
         その他にも、見解は様々・・・
 ・現在、犬とオオカミの分類で、もっとも信憑性が高い判別方法は、頭蓋骨の比較だそうで、
  DNAではほとんど区別がつかないのだそうだ。
  (ということは、死体でなければ区別できないということになり、もし生存していても確認は困
  難ということか・・・いや、CTという手もあるか?)



※後日、東山動植物園へシンリンオオカミの観察をしに行きました。
 ニホンオオカミはタイリクオオカミと比較すると小型で、容姿も行動も異なる点が多々あったの
 ではないか?という考え方もあるそうですが、それならば似ている点もあるはずだと思い、観察
 したくなった次第です。
 8頭飼育されており、様々な行動や表情を観察することができ、この本に記されていたニホンオ
 オカミの特徴と一致する点を幾つも確認する事ができ、肉眼にはこの様に映るのだということが
 分かりました。
 驚いたのは、多様な表情を見せることでした。
 本に掲載されていたヤマイヌの標本は、いずれも吊り上った表情をしていましたが、シンリンオ
 オカミも似たような表情をすることがあり、かと思えば大変温和な表情を見せたりと、表情豊か
 なことに驚きました。
 個性も様々ある様で、一頭一頭行動にも特徴が認められました。
 ニホンオオカミはどの様な動物だったのだろう?と、シンリンオオカミを観察しながら思いを馳
 せる一時は、楽しい時間でした。
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